TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

短編小説

代弁屋

「嘘をつかなきゃ生きられない、ほんとのことを言ったら殺される」と思い込まされている僕にとって、「代弁屋」は、とても魅力的な仕事人。僕は父親に虐待されていて、彼は日々のストレスを発散するために、愛するべきはずの息子の体を殴ったり蹴ったりする…

瞳の中の道化師

本作は自殺した友人から訳あって著作権を譲り受けた短編小説。 誤字脱字を修正する以外の添削は行っていない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「道化師は何故笑う?」 1 私の両親は、幼子でも解るほど下衆な人間だ…

仮面

ちなみに、この短編小説は「面白い!と、つまんねえ!」の賛否両論がメチャクチャ激しかった覚えがあります。というか、本作は長編小説の出だしをチョット改稿しただけの作品なので、どうも尻切れトンボ感が強すぎる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

自殺者の冒険

0 「この怪奇なる文章データについて」 これは今から一年前に自殺した、とある少年によって創られた物語。 私は、この陰鬱で摩訶不思議な物語の作者とは、全く無縁の他人だ。たまたま彼の自殺する現場を最初に目撃して、彼が最期まで大切そうに抱えていた大…

しあわせの国

君はぼくらの姿を見つけたのか? ははは。びっくりしただろう。ぼくらは君と目を合わせることができてすごくうれしいよ。今日は一段と爽やかな青空だね。ほら、空に花も咲いている。君はぼくらの声が聞こえるようだから、ぼくらのことを教えてあげよう。 ぼ…

魔法のキノコ

死んだはずのパパから手紙と小さな木箱が家に届いた。正直、パパに対してはそれほど愛情もなかったので、どうして死んだのかは知らない。でもパパのくせ字は凄く好きだったから、誰かがふざけて出した手紙じゃないのは分かった。 手紙には二行しか書かれてい…

リンとトビー

『1』 青いウサギのリンは、雪の降る白い空を眺めながら、ふと思った。神様、カンナちゃんは、どこに行っちゃったの、と。 カンナは、ちょっぴり不思議な女の子。心の中で念じるだけで、スプーンを曲げたり、ガラス製のコップを本物の白鳥に変えたりするこ…

芸術家肌の仲良し兄妹

今日、妹の空子(そらこ)が、僕の部屋の前で壊れたジョークを吐いた。「兄さん、この辺りに機関銃を売ってるような店を御存知?」 その台詞を口にした空子が、薄気味の悪くなるほどさわやかな笑顔をしていたために、焼け付くような混乱と軽度の頭痛が同時に…

四匹の手

とある小さな島に四匹の「手」がいました。彼等は仲良し義兄弟です。長男のアカは赤く、次男のアオは青く、三男のキは黄色で、四男のミドリは緑色。みんな生きていることが楽しくて仕方ありません。 彼等は、かつて人間たちの下で酷使されていた「手」でした…

キリエ

とあるアパートの一室で、僕の大切な女の子であるキリエは満面の笑みで言いました。「ユキジくん、わたし、カボチャ食べたくなった! 穴つきのカボチャがいいの! 一緒にスーパーマーケットにいこーよ!」「こないだ、食べなかった?……いや、でも、そうか………

マリーのライフワーク

とある山小屋に、一人の小さな魔女が住んでいました。彼女の名前はマリー。少女は親も居なければ、学校にも通っていません。けれどたくさんのお友達がいました。そんな彼女のライフワークは、苦しむお友達を助けることです。嘆きの声が今日も小屋に届いて、…

子ぎつねと天使

ぼくはきつねの男の子。ある日火縄銃で撃たれて死んだんだ。つまり今ぼくは幽霊。おなかがすいてたから、人間が釣った魚を盗んじゃって、怒った釣り人に殺されたんだ。 ぼくは人間の男の子と一緒の家に住んでいたんだ。いっぱい油揚げをくれたから、ぼくはあ…

白の王国

前書き。この作品は私の処女作です。書き始めの頃は、どのような文章だったのかを見せるために、あえて細やかな添削は施しておりません。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『0』 ある日突然、少年の視界が変わった。…