TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

実は虚無についての語りでもある

 専門学校時代に、ちっぽけな苦楽を共にした、私の同期生たちのことを思い出し、ふと思ったことを書き綴ってみた。

 今のところ同期生たちの中で、おそらく最も暇人である(最悪、生活に困窮してお先真っ暗になったら、独りで積極的に餓死すりゃいいじゃないという心構えで生きているおかげで、暇人フリーターであることに何ら抵抗がないのです)私だからこそ思うこと。
 Tライターズ(とある専門学校の生徒たちが書き上げた、文芸作品や日記などが投稿されるSNSサイト。そして、そのサイトにおいて最も精力的に様々な文章を投稿していたのは、私の同期たちである)で、私の同期たちが全く文章を書かなくなったのは、単純に皆が忙しくなったというだけでは、ないのだろうなあ。あそこに自分の書きたいことはないのだと、皆は薄らと気づいたのだろう(あるいは、もう既に書きたいことが何もなくなってしまっているだけかもしれないが。ただし、だとすれば、彼等に対して本気で失望せざるを得ないのだが)。皆がログインしても、近況を録に書かなくなったことから考えると。もしくはTライターズ以外に、自分の中に湧き上がった言葉を放出するに相応しい場を見つけ、その新しい場(たとえばブログやツイッターなど)で活動するようになっただけかもしれないが。
 無論、これを悪しき事態であるとは一切思わないし、全く悲しいことであるとも思わない。良いことであるのかは分からないが。
 そして、この事実から思いついたことがある。学校も、会社とさほど変わらない、檻なのだと。仲良くなれそうにない人間とも上手く付き合っていかなければならない閉鎖空間。
 僕らは、さほど心の底では繋がっていないのだ。ただ単に気晴らしのために仲良くしていただけ。ただ単に自分自身の暇を潰すために利用し合うための仲に過ぎない、のだとも言えるのだ。元より、だいたいの私たちが他人と関係するのは、あくまで人間が自分ひとりでは生きていけない脆弱な存在であるゆえに、他者の力を借りなければ生きていけないからだ。
 ただ、かと言って、人と人との関係性が、ここまで単純なものであると豪語するつもりもないのである。それだけの理由で、すべての人間が他者と関係するわけでも、もちろんない。だが、それ以外の理由を言語化しようとしても、私には無理なのだ。そして私には人間関係を作るということ自体に何ら快楽を見いだせない。だいたいの他人と遊ぶということには、それなりの快楽を見いだせるが、あの程度の快感を得るために、わざわざ人間関係を築き上げようとすること自体が、ひどくバカらしいものとしか思えないのだ。
 ところで私個人が人と関与してみるのは、自分自身にとって興味のある事物を見せてくれそうだからであり、人間自体が芸術の素材だからである。人間の言動は、すべてが創造のための足がかりであり、そして人間の生み出してきたものすべては、創造のための材料であり、道具でもある。
 しかし、このような理屈をアレコレと述べたところで、結局は気晴らしのために、自分自身の暇を潰すために、そして自分自身にとっての利益を得るために、使っているだけであると言えるということには、変わりない。
 結局、僕は、僕たちは、同期たちに何ら価値のない存在として見なされたことによって、あのサイトにて何も言葉を生み出さなくなっただけなのだろう、という風にしか自分には思えない。自分の中の何かを言葉にしてみることによって、自分の中での消化できないモヤモヤを攻略できるようになったり、その言葉への様々な反応を頂戴することによって新たなる気づきを得られるようになったり、などの無視できない利点が生まれることから考えても、ね。
 だが私には、彼等が日常にて起こったアレコレから湧き上がってきたモノの言語化をしないで気が済むほど、ヤワな存在であるとは思えない。どんなに忙しくても、どんなに疲れ果てても、それでもなお、どこかで自分の中の熱を言語化しなければ気が済まなくなるようになるのが、創作と文芸を学んできた者としての、生き様であろう。
 私は同期たちに、またTライターズで近況や何か適当な事をバシバシ書き込むようになってほしいと望んでいるわけじゃない。私の知らないどこかで、あなたたちが言葉にしたいことを、きちんと言葉にできているのだろうか、と、ほんの少し心細くなっているのだ。
 今だからこそ言えるけど、僕は同期である君たちのことを、そんなに好きじゃないよ。君たちも僕のことは大して好きじゃないだろうし(むしろ嫌いで嫌いで仕方ないという人間もいるかもしれないが)、それくらいで僕は全然いいのだよ。でも心のどこかでは、なんだかんだで君らが幸せに生きてくれることを、ほんの少しは望んでいるのだよ。私にとっては、どうでもいい君たちであろうとも、それでも脆弱にして可憐な人間なのだから。