TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

アイ

 まだ未完。ちなみに一度Twitterの方にアップしたこともあるよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

  『0』

 

「バラバラ殺戮」

 好きな人を
 嫌いな人を
 バラバラに殺してみましょう
 
 両親も
 友人も
 無関係な人も
 バラバラに殺してみましょう
 
 職場の人も
 同級生も
 正義の味方も
 凶悪犯罪者たちも
 とにかく大量の人を
 バラバラに殺してみましょう
 
 そして愛する人々の顔面を切り裂いて
 かわいい眼球を取り出して
 東京タワーのてっぺんから
 ぜんぶ落としてみましょう
  
 そしたら大地に降り立って
 地獄のような天国をみてみましょう
 そこに散乱している沢山の目玉のなかから
 あなたにとって大切な瞳孔を
 はたして見つけ出せるでしょうか 

  『1』

 

「臭い小部屋の中で」

 

 三日月の哂う夜、私は恋人であるアイの乳頭を、ぺぱりろろと執拗に舐め回している。
 彼女の乳房は麻薬だ。口に含み、桃色の掌で包むだけで、体中に甘い電気が走る。頭上から慈愛の雨が降り注ぐ。脳味噌が溶けていく。彼女は透明色の両手で、私の後ろ髪を掻き乱しながら、僅かな嬌声を上げながら、柔らかいベッドの上で蠢いている。まるで女神に擬態する芋虫のようだ。
 陰茎が絶叫した。こいつを壊したい、滅茶苦茶にしてやりたい、はやく甘美にして純白の世界へと旅立ちたい! 
 親愛なる友よ、そんなに急かさないでくれ。まだ、あちら側で溺れたくない。あと少しだけ、こうしていたい。私は左手で陰茎の口を塞ぐと、中指で恋人のセクスを撫ではじめた。彼女は肉体をグリュラパワと震わせた。胸のなかが、さらに熱くなった。
 しばらく愛撫していると、アイが囁いた。はやく頂戴。もう、ほしくてたまらない。
 私の内側で何かが弾け飛んだ。
 どうしたの? ねえ、焦らさないで。
 蜂蜜よりも甘い、ウィスパーボイス。 
 きて。
 白い稲妻が落ちてきた。
 私は、自らの心臓を抉るように膣を貫くと、妖女は、艶やかな、歓喜の悲鳴を上げた。
 嗚呼、まさにヘブンだ。ドラッグだ。
 それから長い間、舌でアイの頬を舐め回しながら、腰を一心不乱にふり、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ(変更する予定)と、聖なる口から漏れる福音を堪能していた。そして、わたしたちは、己の肉体に、限りない狂気を宿らせるために、ひたすら、くるっていたのである。死にながらも生きるように。
 やがて全身に純白の閃光が走った。亀頭から命の歌声を、神聖なる子宮に溢してしまった。彼女は私の双肩に、乳白色のマニキュアが塗られた爪を深く食い込ませ、キュルラルレと痙攣した。幸福が、私を、侵していく。
 アイ、ずっと、このままでいたい。現実の世界になんて戻りたくない。僕は、君を、まだ僕の小さな部屋の中から、出したくない。本当は永遠に閉じ込めておきたい。
けれど恋人は、氷の言葉で私を傷つける。
 ずっとは嫌。はやく出してよ。
 臭くて堪らない、あなたの檻から。
 彼女の淡々とした物言いが、まだ痛々しいほどに硬直していた陰茎を、みるみる萎ませていき、そして体の芯が一気に凍えていった。
 仕方なく女の要望通りに、一日に二回も掃除をしているにも拘らず、彼女から臭いと評される室内から出してあげることにした。
 だから私は、唾液に濡れた私の舌の上で、ニュルベラルレになったアイを、ガラス張りのテーブルに置かれたプラスチック製のコップに、にもぎゅるぺー……と、吐き戻す。
 無機質なコップの底で、アイと名付けられた人間の眼球が、淫らに輝いている。
 私は、その中から妖かしの宝石を取り出し、右手に乗せて、キスをしてみた。
 美味だ。チョコレートの甘味を感じる。
 リビドーの唾液に塗れた恋人の肉体に、酔いしれる私の左目は濃褐色で、右目は青紫色。