TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

対峙

 積み木を崩すように愛を粉々にしてみると、大河が出来た。目の前には、小舟が浮かんでいた。櫂を漕ぎ、ひたすらに前へ、前へ直進していくと、小さな孤島を発見した。

 陽射しへの憎悪を滾らせながらも、上陸し、砂浜の砂を掬ってみた。神の気配を感じたときに自覚せざるを得ない、心臓の闇が、つまり胸中の影が迫ってきた。さきほど粉砕した光が涙を流している。一人の少女が絶望している。笑えるくらいに、みっともない泣き顔をつくりながら、私を睨みつけていたため、つい、「どうしたの」と声をかけてしまった。

 彼女が「殺してやる」と連呼しだす。何を殺そうとしているのかは分からないが、自分自身が先程、美しいものを木端微塵にしたことを憎んでいるのは、その眼差しから察せられた。そして怒りが放たれ、石ころは世界となる。無数の死を呑み込めるようになる。 

 だが、これを神だとは、けして認められそうにない。ただの自殺の比喩でしかない。