TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

代弁屋

「嘘をつかなきゃ生きられない、ほんとのことを言ったら殺される」と思い込まされている僕にとって、「代弁屋」は、とても魅力的な仕事人。僕は父親に虐待されていて、彼は日々のストレスを発散するために、愛するべきはずの息子の体を殴ったり蹴ったりするのだ。

 でも、たまには本音で話してみたくなることもある。だから自分の本音を分かってくれる上に、それを言葉に出してくれるという「代弁屋」が居るという話を聞いたとき、心が躍った。これで父とまともに話をすることができると喜んだ。今までは父が怖くて仕方が無かったけど、これならばと。僕は代弁屋と交渉をした。代弁屋は子供の悩みには無料で答えてくれるというので、小学生の僕にはとても有り難かった。

 その日、父が帰ってきて早速私は父に話がしたいと言い、代弁屋を呼ぶ。代弁屋は父の前に現れた。代弁屋の第一声はこうだ。「息子さんはあなたに死んでほしいと思っています」