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TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

マリーのライフワーク

短編小説 ???電波 読書上級者向け

 とある山小屋に、一人の小さな魔女が住んでいました。彼女の名前はマリー。少女は親も居なければ、学校にも通っていません。けれどたくさんのお友達がいました。そんな彼女のライフワークは、苦しむお友達を助けることです。嘆きの声が今日も小屋に届いて、少女は仕事に向かいます。

 山から下りると、彼等を救うために街へ向かいました。そこには彼女がやってくるのを待っている友人がいっぱい。少女は誰が困ってるのかなと考えながら街並みを歩きます。

 すると、ある一軒家から、おーいと少女を呼ぶ声がします。声の主は小さな魔女のお友達です。マリーは玄関前で「おじゃまします」と挨拶をして、家の中へ入ります。

 中から首吊り死体の男がマリーを出迎えました。「こんにちは! 今日はいい天気だね」と首を縦に振って血を吐きます。

 男は他のお友達と比べて、とても辛そうに見えました。例えば一昨日助けた男の子は、胸を刺されていただけだったし、昨日助けた女の子は手首から血が溢れていただけです。他にも少女は色々な死を見たけれど、首吊りが一番苦しそうだと思いました。

 だけど、どんなお友達だって助けられる自信がマリーにはありました。

「ねえねえお兄ちゃん、今どんな感じ?」

「……僕は今すごく息苦しいんだ。喉も乾くし、頭もうつろうつろしてる。死んでからずーっとこんな感じなんだ」

「大丈夫だよ! 私がお兄ちゃんを楽にしてあげるから! 私ね、魔法が使えるの! お兄ちゃんが血を吐かずに済むようになるし、ゆったりした気分になれるのよ!」

 小さな魔女は、そう言うと早速、「ちちんぷいぷいちちんぷい!」と男に魔法をかけてあげました。

 するとどうでしょう。なんと男の体が頭から縦にまっすぐ切断されてゆくのです。血がドピュドピュと噴き出て、肉体が綺麗に分裂しました。でも男は気持ちよさそうでした。

「ああ、あんなに苦しかったのが嘘のようだ。ありがとうお嬢ちゃん」

 マリーは感謝の言葉を聞く度に、生の至福を覚えます。でもこれだけでは、死を無駄にしてしまうから、救済とは呼べません。

「ここからお兄ちゃんと私だけのカーニバルが始まるよ! 今から奇跡を見せてあげる! ちちんぷいぷいちちんぷい!」と呪文を唱えると、真っ二つの体から犬が生まれました。

「ワンワン、ワンワン!」

素晴らしいとは思いませんか? 

マリーの魔法によって一つの死から、一つの命が誕生したのです。

「おお、なんて可愛らしいワンちゃんなんだ! 僕の死も無駄じゃなかったんだね!」

「そうだよ。すべての死は誕生への布石に過ぎないんだよ。だからお兄ちゃんはもう安らかに眠っていいの」

「ありがとう、お嬢ちゃん。これで僕は……」

 男の目蓋が安らかに閉じられていくのを見て、少女はよかったねと呟きました。