TH.Another Room

学生時代に書いた文芸作品をアップしています。

「生誕」

九月二四日の夜、何気なく財布の中から紙幣を取り出し、それを鋏で切り裂いたあと、晩御飯を食べてみた。今日のメニューは納豆ご飯とサラダ。いつものように美味しかった。 食事を終えて、お皿を洗う。じゃぶじゃぶと音をたてながらスポンジの泡立ちを堪能す…

「旅のはじまり」

時が止まっている。白い霧に視界が封印されている。悪魔の顔だけは見えている。それは美しい人間であるのかもしれないと思った。一瞬、ついに自分自身が、認知症を患ってしまったのだろうかとも疑った。心は今、生と死の境目を彷徨っているようである。激し…

「とある手記の忘却についての手記」

これは、会社を辞めてからの自分が毎朝、思うようになったことのメモ書きである。 時には昔の話をしなくては今が色褪せる。と、思うのだが、自分には過去の記憶がない。そもそも昔語りをするための友や女もいない。 しかし、いま、眼前にある鏡に映る者は、…

「灯火」

金閣寺が燃えているかのような心が、窓の外で彷徨っているのを目撃した。その金色のローブを纏った死神が、俺を殺そうとしているのか、いま、絞縄が首に食い込んでいる。部屋の片隅に放置された段ボール箱の上には、まだ腐ってはいない蜜柑が乗せられている…

「悪魔が来たりて」

「あくまがきたりて、かみをきる」 幼い頃に祖母から教えられた、おまじないである。これを十三秒以内に言い切ると、地の底から「騎士」が詠唱者を守りに来る、らしい。詠唱を、けっして他者に聞かせない、というルールさえ守れれば、最強にして不死なる者を…

「味噌汁の温もり」

瞼を閉じ、母なる温もりに口づけをする。故郷の景色が色鮮やかに移りゆく。田園風景、寂れた町並み、清らかな川に支えられる鉄道橋。両の手を静かに下ろし、目を開ける。机の上には、たくさんの和布と豆腐と一寸法師がリラックスしている大きなお椀がある。…

「聖剣がそこらじゅうに落ちている世界」

ある日の朝、散歩中に、またしても大地に刺さりし聖剣を見つけた。ピクミンを引っこ抜くような感じでエイヤッと入手した。どうせ昨晩、勇者の責務に耐えかねた者が、この家のあたりに放棄していったのであろう。 持主のいなくなった聖剣を見かけるたびに、放…

「毛布の上には何もない」

朝、起きて、気がついた。見知らぬ女がベッドの上で、毛布をかけられて死んでいる。 これが死体であるのは、なんとなく分かる。そう理解していること自体が、我ながら奇妙なものだと思う。息はしていないし、何者かから後頭部を鈍器で殴られて逝ってしまった…

「魔術師の塔」

東京タワーに足を運んだことは一度もないのだが、テレビや雑誌などでは何度も目にしてきた。いま、私の目の前にそびえ立つ、この巨大な塔は、東京タワーに酷似しているのだが、塔の周囲には田園風景が広がっている。狭い砂利道の傍らにて大爆発のような何か…

「死骸」

扉を開けると、悪夢が広がっていた。「私は、悪いことなんてしてない」と泣き叫ぶ少女の声の喧しい空間に投げ出されていたのだ。 黒い氷柱のような立体的な映像が頭上に降り注がれている。身体から血は流れていないが、鋭い痛みであれば生じている。その蜂の…

「妖精探し」

前人未踏の地に到達した。ここは、一見しただけでは単なる雑木林にしか思われない場であるが、実は妖精の生息地の一つである。詳細は記載できないのだが、私が追い求めている妖精というのは木の葉を主食とする生き物であり、この林から集められる葉っぱ全て…

「少年と死神」

一 ポケットの中のビスケットを叩いてみた。パキッという音はしたはずなのだが、さっきまでは満月のような形をしていたビスケットは一枚しか入っていなかった。右手の、人差し指と中指と親指に摘まれた半月を無邪気な笑顔で観察していたら、背後から深夜の闇…

「夢とは何か」

悪夢のようで、悪夢でない夢がある。羽を引き千切られる小鳥が痛みを覚えず、むしろ空を飛ぶために必要な過程であったと喜んでいるのを目撃する類の夢を見ることがある。瀕死の猫がコンビニの電子レンジに投げ込まれて温められて、生き返るという内容のもの…

「特別な仕事」

火を点けられたばかりの一輪の花がある。それはステンレス製の作業机の上の、水垢の全く付着していないガラスの花瓶の中で燃えようとしている。しかし、なぜだか一向に燃え殻と化す気配がしない。数時間前から眠気を堪えつつも、しっかりと観察しているのだ…

「はやく殺して」

一 この心が宙に浮かんでいるうちに、手紙を書き終わらせなくてはならないと決意したにも関わらず、いつまでたっても地を這いつくばるままの自分自身を俯瞰してみるだけで、早く自殺したいという声が脳内で喧しくなる。 さっき出されたばかりのブラックコー…

「初体験」

真っ暗な部屋の中で、じっと手を見つめている僕は、今、何者かに睨みつけられている。足元に転がっている物体の怨念であろうか。いずれにせよ、辺りを見回しても、ここにいるのは自分ひとり。カーペットに染み込んだ赤黒い液体が、お月様のように光っている…

殺戮のルナ・メイジ 12章

ルナ・カノンは島内に潜伏していた何名かの魔術師を始末してすぐに、ドロシーと出会った日に唱えた「オルド・リム」を再発動し、殺人の後始末のできる掃除機を取り寄せ、すべての刺客の胴体と四肢、および、生々しい怨念の伝わってこない血痕を、ギュグラギ…

殺戮のルナ・メイジ 11章

幸福とは、偉大なる温もり。朝食のオニオンスープとチーズパンを胃に流し込み、歯磨きを済ませ、恋人にキスをせがんで、そのあと正午を迎えるまでの間、ふたりで毛布に包まり玉の汗の吹き出る皮膚と性器の熱情を味わい尽くしたあとに直観した真理。 ベッドシ…

殺戮のルナ・メイジ 10章

帝国からの刺客を撃退した日の翌朝に、ルナはドロシーの逃げ場を確保し、そこへ共に脱出しようという目的で、ベルドラード島の上空を飛行していた。とりあえず島から遠く離れられれば、安住の地が見つかるかもしれないと思い、天へ飛び立ってみたのだ。あそ…

対峙

積み木を崩すように愛を粉々にしてみると、大河が出来た。目の前には、小舟が浮かんでいた。櫂を漕ぎ、ひたすらに前へ、前へ直進していくと、小さな孤島を発見した。 陽射しへの憎悪を滾らせながらも、上陸し、砂浜の砂を掬ってみた。神の気配を感じたときに…

ちょっとした決意

今後、自分自身が不満に思ったことは、なるべくその場で言うようにしておこう。それを溜めに溜めまくると、爆発させるべきでない場面で爆発してしまうから、そういうのが攻撃性が強くて人を泣かせる言葉を生み出す元凶になる。そして、こういう言葉は価値観…

あるフォロワーさん(K)との対話のメモ書き

小説書きで、解離症を患っている、私のこよなく愛する現・相互フォロワー・Kとのリプライのやり取りのメモ書き。とても刺激的な対話を2点できたので、こちらのブログでも掲載いたします。また、そのフォロワーさんからブログで発表する許可も事前に頂いてお…

人を生き甲斐にすることについての私見

他人を生き甲斐にしてはいけない、という文章を読んで、そうかな? と思ったのだが、「ああ、他人を生き甲斐にすると、それがその人にとって、その他人に依存するということに繋がってしまうから」なのかもしれない、と思った。 私としては、そういう生き方…

文章を書くにあたって注意していること

文章を書く、と言っても、時と場合によって書き方も変わってくるから、一概にこうとは言えないのですが、概ね誰にでも(自分自身にすらも)分かるように書くことが第一ですね。 普段のツイートについては、古典小説の地の文や論文のような固い文章を綴るとい…

忘却について

忘れて欲しくない、という気持ちが俺にはピンとこない。けして分からないわけではないのだが、そういうものにイマイチ共感できそうにない。正直、今までの自分の知り合いすべてが自分自身のことを忘れようとも、そうなれば大いに不便になるとは思うのだが、…

永遠の対話

私「どこまでいっても人類滅亡が最善であることに変わりはないでしょうね。もっとも、我々が死後、永遠に無と化せるかどうかが問題だから、これも所詮は誤謬なのですが……が、ここを目指そうと試みるのも、また一興かと」 R「人類滅亡がなぜ最善なのだろうか…

自戒としての軽蔑

昨日、私の知人である女性・Mが出演している、素人投稿モノのアダルト動画を鑑賞してみたのだが、全く興奮できなかった。やはり性に溺れる女というものは、何ら専門的な訓練を受けていない無垢な蛮人が表現できるほどの安っぽいモチーフでないのだと思い知っ…

開かぬ朝顔

カプリ・チャコール、を吸いながら、今宵の月に、酔いしれる僕。美酒は暗黒。 何もかも、血肉とさせる、あの日々を、願わくば、もう一度。 帰れぬ二人。常夜の裂け目。もう二度と、戻らぬ過去よ、私を殺せ。 血で血を洗う、恋文の、熱と氷に、赤子と骸、蘇る…

実は虚無についての語りでもある

専門学校時代に、ちっぽけな苦楽を共にした、私の同期生たちのことを思い出し、ふと思ったことを書き綴ってみた。 今のところ同期生たちの中で、おそらく最も暇人である(最悪、生活に困窮してお先真っ暗になったら、独りで積極的に餓死すりゃいいじゃないと…

人はなぜ虫を嫌うのか、という問いかけへの回答

虫は好きです。道具として。使用法は以下の通りです。 幼女の、まだ産毛の生え揃っていない膣にゴキブリを這わせるのがイイと思います。特にイチゴ柄の下着の中に忍び込ませるのが最高だと思います。幼女の泣き顔は、きっと自分の彼女とのノーマルなセックス…